ふるさと納税の駆け込み需要と、9月のEC売上減少に対する経営判断について
今年の9月、多くのEC事業者にとって売上が厳しい月となりました。
しかし、それは「売れなかった」のではなく、家計の支出先が一時的に移動した結果と言えます。
本稿では、ふるさと納税の駆け込み需要がもたらした市場の動きを整理し、中小企業の経営に必要な視点を共有します。
1.9月に何が起きたのか:需要の「移動」という視点
9月は例年、ECの動きが落ち着きやすい月ではありますが、今年は特に振れ幅が大きい状況でした。
弊社はもちろん様々な業界の企業から同様の声が寄せられていました。
その要因として、ふるさと納税の駆け込み需要が挙げられます。
家計における「支出の優先順位」が一時的に変化し、ECに回るはずの消費が返礼品に集中したのです。
「売れなかった」のではなく、「消費先が動いた」。
この理解が、正確な経営判断に繋がります。
2.ふるさと納税と家計の財布の構造
ふるさと納税は、「自己負担2,000円で返礼品が受け取れる」という制度設計により、消費者に強いメリットがあります。
加えて、値上げ・物価高が続く中で、家計は「同じ支出でも得をしたい」という行動に合理的に向かう傾向があります。
つまり、日用品・食品・生活消費と重なるカテゴリーは、ふるさと納税に置き換わりやすいのです。
- 通常の食費 → 返礼品で置き換え
- 贈答用途 → 返礼品で代替
- 自家用ストック → 返礼品でまとめ取得
この結果、従来ECに向かっていた需要が、一時的に転移したと考えられます。
3.今年はなぜ例年以上に影響が出たのか
今年は以下の複合要因により、駆け込み需要が例年より強く出ました。
- 制度改正関連の報道が多く、認知が加速
- SNS・比較サイトで返礼品紹介コンテンツが増加
- 物価高により「家計防衛意識」が例年以上に強かった
- ポイント経済圏との連動施策が活発だった
要するに、「制度 × 情報 × 心理 × 価格」 が同時に作用した月だったと言えます。
4.経営において「一時的な落ち込み」をどう捉えるか
売上が落ちたとき、ただ「対策を打つ」ことが正しいとは限りません。
大切なのは、現象の原因が構造的か、一時的かを見極めることです。
焦りは誤った投資や値下げ競争につながります。
今回の動きは「季節性+制度要因による短期的な変動」です。
半年・1年というスパンで需給の波を捉えることが、持続的な経営に必要です。
5.では、どう備えるか:中小企業に必要な「年間設計」
① 年間の売上波形を前提にした計画
月次ではなく、四半期・半期での売上の流れを見ること。
② 平時に仕込み、繁忙期に取り切る
SNS・顧客リスト・リピート動線の土台づくりは「静かな月」に行うべきです。
③ 顧客と接点を失わないコミュニケーション
売れない月こそ「発信」と「対話」を止めないことが重要です。
6.まとめ:市場は生き物である
市場は常に動いています。
経営とは、「波を制御すること」ではなく、波を理解し、乗りこなすことです。
9月のEC売上減少は、決して悲観すべき現象ではありません。
むしろ「市場の動きがなぜそうなったのか」を読み解くことで、
来期の販売設計・顧客戦略に活かせる“学びの機会”となります。
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