ラインロビングで市場はどう変わった?カテゴリ境界が溶ける時代のEC生存戦略
最近、ECの現場でこんな感覚ありませんか?
- 「あれ、この会社こんな商品も扱ってたっけ?」
- 「気づいたら、競合が自分の得意ラインに入ってきてる」
- 「領域がごちゃ混ぜになってきて、差がつかない」
そう、今の市場ではラインロビングが加速しています。
これは「仕入れ競争」でも「EC価格比較」だけでもありません。
カテゴリそのものの境界が溶けているという現象です。
ラインロビングとは何か? ― カテゴリを越境する動き
本来、企業には「得意な領域(ライン)」があります。
- バッグの会社
- 時計の会社
- ジュエリーの会社
- アパレルの会社
- スポーツ用品の会社
ところが今は、これらの境界が曖昧になりつつある。
バッグの会社が時計を仕入れ、時計の会社がジュエリーを扱い、ジュエリーの会社がアパレルへ参入する。
こうして、各社がお互いの畑に侵入することで、カテゴリはどんどん広がり、溶けていきます。
これが、現場で言うラインロビングです。
なぜ今、ラインロビングが加速しているのか?
① モール・プラットフォームが境界を消した
楽天・Amazon・Yahoo・TikTok。
これらのモールは「カテゴリで専門性を守る」仕組みではありません。
「売れれば正義」「売れるなら何を出してもいい」世界です。
② 仕入れ情報が透明になった
相場は常に見えている。
業者間のラインはすぐ共有される。
「その商品、いくらで入れてるか」もバレやすい。特に型番商品の場合は顕著です。
③ ECに必要な機能が標準化された
- 画像加工くらいは誰でもできる
- 発送は物流代行で整う
- SNSで広告はできる
つまり、参入障壁がほぼ消えた。
カテゴリが溶けると何が起こるのか?
- 競合数が一気に増える
- どこで買っても同じに見える
- 価格が下方向に揃っていく
本来、10社程度で回っていたカテゴリに、
周辺から50社〜100社が流れ込んでくるイメージです。
そして価格は、こうなります:
低い方に引っ張られる。
結果、
「売れるのに、利益が残らない。」
「経験」「知識」「積み上げ」が評価されない時代
昔は、同じカテゴリを長く扱うことに意味がありました。
- 商品を見る目(鑑定 / 目利き)
- 仕入れのパイプ
- 顧客に対する説得力
ところが今は、こうなってしまう。
スマホ画面では、それが一切伝わらない。
ユーザーが見るものは、
- 画像
- 星の数
- 価格
その結果、どれだけ経験があっても、
「安い店」と同じ地平に立たされる。
では、中小企業はどうやって勝つのか?
答えは「設計」しかない。
商品そのものではなく、選ばれる理由を設計する。
これはテクニックではなく、構造設計です。
具体的には:
- 「誰のための商品か」を明確にする
- 「使うとどう変わるか」を伝える
- レビューを「機能」から「共感」に育てる
- 画像を「比較」ではなく「理解」に寄せる
差は、商品には宿らない。
認識に宿る。
まとめ ― 価格競争から抜けるには
- ラインロビングでカテゴリ境界はなくなる
- 競争は「広がり」ではなく「深さ」で勝つ時代
- 見える差ではなく「感じる差」を設計する
ECは厳しい。
でも、まだ勝ち筋はある。
「意味」を作れる会社は、必ず残る。