自分のことだけを考えると人間関係は破綻すると思う。人間関係は「価値交換」で成り立つ。
人が抱える「人がついてこない」という悩みは、性格や熱量の問題ではありません。根本原因は、関係の設計が曖昧なまま組織を運営していることにあります。
人は理念では動きません。人は価値で動きます。
ここでいう価値とは、お金だけではありません。
- 成長できる
- 承認される
- 役割がある
- 必要とされる
- 安心できる
人は「自分にとって意味がある関係」だと感じられるとき、初めて動き、関わろうとします。
人間関係は「交換バランス」で維持される
| 状態 | 結果 |
|---|---|
| 与えすぎ | 疲弊し、見返りを求め始める |
| 奪いすぎ | 相手が離れる |
| どちらも与えない | 関係は自然消滅する |
良い関係とは「善意」ではなく、循環がある関係です。
組織における価値の循環モデル
役割と価値の交換が循環しているとき、組織は強い
経営者
方向性 / 裁量 / 成長機会
方向性 / 裁量 / 成長機会
⇄
幹部
意思決定補助 / 翻訳 / 現場の支点
意思決定補助 / 翻訳 / 現場の支点
幹部
役割委譲 / 評価 / 育成
役割委譲 / 評価 / 育成
⇄
メンバー
成果 / 改善 / 実行
成果 / 改善 / 実行
経営者
安全性 / 認識の統合 / 称賛
安全性 / 認識の統合 / 称賛
⇄
組織全体
自律性 / 継続 / 強い文化
自律性 / 継続 / 強い文化
価値交換が崩れ始める7つの兆候
- 会議で発言が減る
- 質問が減る
- 遅刻・小さなルール違反が増える
- 「言っても無駄」という空気が生まれる
- 貢献が義務に変わる
- 成果が横ばいになる
- 雑談が減る
兆候は必ず表面に現れます。問題は、それを「構造の歪み」として見れるかどうかです。
価値交換を再構築する会話例
悪い会話
社長:「もっと頑張って。期待してるから。」
社員:「具体的に何をすれば…?」
社長:「そこは自分で考えようよ。」
→ 価値交換は成立しない
良い会話
社長:「この役割を任せたい。あなたの強みは◯◯で、それがここで活きる。」
社員:「成果の基準はどうしますか?」
社長:「到達点は◯◯。進め方は任せる。」
関係には“期待・役割・裁量・評価”の明文化が必要です。
Before / After:価値交換の設計がない組織 / ある組織
Before
- 理念で動かそうとする
- 役割が曖昧
- 成果が測れない
- 不満が蓄積する
- 関係は感情依存
After
- 交換条件が明文化されている
- 役割と基準が共有されている
- 価値の受け渡しが見える化される
- 対話は「往復」が前提
- 関係は強さと継続性を持つ
経営者はなぜ「自分のことだけ」になりやすいのか
経営者は、決して自己中心的なのではありません。
抱えている重圧が大きすぎるのです。
- 会社の未来の不安
- 売上の責任
- 社員の生活を背負う重み
- 家族への責任
孤独は視野を狭め、交換の循環を止めます。
だから、関係の設計は「一人で抱えてはいけない」のです。
明日から始められる「価値交換の再設計」3ステップ
① 相手が受け取っている価値を書き出す
② 期待と役割を、お互いの言葉でそろえる
③ 成果の判断基準を合意する
関係は、感情ではなく「設計」から変わります。
まとめ:経営とは「関係の設計」である
人は理念では動きません。価値で動きます。
価値交換が成立している関係は、強くて長い。