パッケージの色で消費者の捉え方は変わる
店頭でもネットショップでも、私たちは「中身」を見る前に、まず色を見ています。
同じお茶でも、同じお菓子でも、同じ洗剤でも──パッケージの色によって「高そう」「優しそう」「体に良さそう」「若者向けっぽい」など、受け取る印象が大きく変わります。
商品開発側からすると、どうしても「中身の品質」「スペック」「原材料」という価値の方に意識が向きがちです。もちろんそれは大前提として大事です。
しかし現実には、お客様が購入を判断する瞬間に使っている情報の多くは“見た目”、その中でも特に色が占める割合がとても大きいのです。
このブログでは、パッケージの色が消費者心理に与える影響を整理しつつ、中小企業が実務でどう活かすかという視点でまとめていきます。
◆ 色は「無意識のラベリング」をしている
たとえば、スーパーのお茶売り場をイメージしてみてください。
緑色のパッケージを見ると「お茶」「自然」「優しい」「健康」などのイメージが自然に湧いてきます。
同じ棚に、真っ黒なパッケージのペットボトルがあれば「濃い」「大人向け」「苦味が強そう」と感じるかもしれません。
このように、色にはそれぞれ連想されやすいイメージがあります。
- 緑:自然・健康・安心・リラックス
- 青:信頼・知性・クール・清潔感
- 赤:情熱・活力・刺激・衝動買いを促す
- 黄色:明るい・楽しい・子ども向け・お得感
- 黒:高級・重厚・プロ仕様・少しストイック
- 白:シンプル・清潔・クリーン・ミニマル
- 金・銀:プレミアム・期間限定・特別感
もちろん、色の捉え方には文化や個人差がありますが、それでもおおよそ上記のような「無意識のラベリング」が行われています。
つまり、パッケージの色を選ぶということは、「この商品をお客様の頭の中でどうラベリングしてもらうか」を決める作業と言えます。
◆ 価格帯・ターゲットによって「似合う色」は変わる
パッケージデザインの相談を受けていると、
「なんとなくオシャレにしたくて黒にしました」
「とりあえず和風っぽく緑で」
といった“なんとなくの色選び”に出会うことがあります。
しかし、本来は
①誰に(ターゲット)
②いくらぐらいで(価格帯)
③どんなシーンで(利用シーン)
使ってもらいたい商品なのかによって、選ぶべき色は変わります。
例えば、同じお茶でも──
- 日常使い・家庭用・価格はお手頃:
明るい緑や黄緑、少し柔らかいトーンの色が合いやすい - ギフト用・特別感・単価は少し高め:
濃い緑+金、深い紺色+金などで高級感を演出 - 若い女性向け・SNS映え・カフェ風:
くすみカラーやパステル系、白ベースに差し色を入れる
「誰に、どんな値段で、どんなシーンで使ってほしいか」を決めずに色を選ぶと、本来取りたいお客様とパッケージの印象がズレやすくなります。
逆にここを明確にした上で色を決めると、デザイン全体がブレずに進みやすくなります。
◆ ネット通販では「1枚の画像+色」がほぼすべて
リアル店舗では、棚に並んだ時の存在感や、立体物としての印象も大切です。
一方で、ネット通販ではサムネイル画像1枚と、その中で目に入る色が勝負になります。
楽天・Amazon・自社ECなどでは、商品名を読む前に「なんとなく目に入る商品」と「全く視界に入らない商品」が分かれます。
この「なんとなく目に入る」を作っているのが、写真の構図と配色コントラストです。
- 背景と商品色が同化していないか
- サムネイルの一覧に並べて見た時に、埋もれていないか
- ブランドとして使いたい色が「小さすぎて」見えない状態になっていないか
ネットでは、紙の質感や細かい模様はほとんど伝わりません。
だからこそ、「遠目で見た時の第一印象=色の塊」としてどう見えるかを意識する必要があります。
パッケージそのもののデザインだけでなく、
- 撮影時の背景の色
- 補助的に置く小物の色(茶碗・お皿・クロスなど)
- テキストバナーに使う色
まで含めて、「画面全体の色設計」として考えると、ECに強いパッケージになります。
◆ 「味」「品質」と色のギャップは、クレームのもとにもなる
パッケージの色は、単に印象を左右するだけでなく、お客様の期待値を決める役割も持っています。
例えば、さっぱりした飲み口の緑茶なのに、真っ黒で「濃い・男前・苦そう」なデザインにすると、
「思ったほど濃くない」「期待していた味と違う」と感じられるかもしれません。
逆に、マイルドで優しい味のお菓子なのに、刺激的な赤と黒でエナジードリンクのようなイメージを与えてしまうと、これもギャップになります。
このように、色は「この商品はきっとこういうものだろう」という事前期待を作るため、そこから大きく外れると、商品そのものは悪くなくても「なんか違う」と感じられてしまうのです。
中小企業にとって、せっかく手間ひまかけた商品の評価が「パッケージとのミスマッチ」で落ちてしまうのは非常にもったいないところです。
逆に言えば、パッケージの色を見直すだけでも、お客様の満足度やリピート率が変わる余地があるとも言えます。
◆ 色を決めるときの「5つのチェックポイント」
では、実際にパッケージの色を決めるとき、何を意識すればいいのか。
現場でよく使うチェックポイントを、5つに整理してみます。
① ターゲットの年齢・性別・ライフスタイルに合っているか
若い女性を中心にしたいのか、シニア層なのか、ファミリー層なのか。
ターゲットが変わると「安心感を覚える色」も変わります。
ヒアリングやアンケートで、「この色合いを見てどう感じるか」を確認すると、思わぬ発見が出てくることもあります。
② 価格帯とのバランスは取れているか
お手頃価格の商品なのに、重厚な黒と金で「超高級」の雰囲気を出しすぎると、価格とのギャップで違和感が出ます。
逆に、高単価の商品なのに、軽いポップな色合いだと「この値段ならもっと高級感が欲しい」と思われてしまうこともあります。
③ 売り場全体・競合商品の中でどう見えるか
単体で見ると良くても、棚に並べたときに「埋もれてしまう」配色は避けたいところです。
実際に競合の商品写真を横に並べて、「お客様の視界にどう入るか」を確認することが大切です。
④ ブランドとして一貫した色になっているか
シリーズ商品を出していく場合、「ブランドの軸カラー」を決めておくと、陳列時にまとまりが出ます。
全て同じ色にするのではなく、
・ベースカラー:ブランドを象徴する色
・サブカラー:味や種類ごとの違いを出す色
のように設計しておくと、認知が積み上がりやすくなります。
⑤ ECサムネ・LP・パンフレットまで含めて統一できているか
パッケージだけ良くても、WEBバナーやパンフレットの色が毎回バラバラだと、ブランドとしての印象が薄れてしまいます。
「この色を見たら御社を思い出す」と言われるくらいまで、少しずつ統一していくのが理想です。
◆ 中小企業こそ「色」を武器にできる
大企業のように莫大な広告費を使えない中小企業にとって、
パッケージの色・デザインは、もっともコスパの良いマーケティング投資のひとつです。
・中身は良いのに、見た目がもったいない商品
・ターゲットとパッケージの雰囲気がずれている商品
・ブランドとして何色を大事にしているのかが曖昧な状態
こうしたケースは、現場で本当によく見かけます。
色を少し見直すだけで、「取られ方」=お客様がその商品をどう感じるかが変わり、売れ方やリピート率も変わっていきます。でも実際はコストはかかるし、ロットも必要。それに高度なデザインが必要です。専用ソフトも使いこなす必要があります。だからできていないのだと思います。弊社も様々なフリーランスにデザインを依頼したこともありましたが、十分な品質のデザインは上がってきません。だから理論と現実は本当に違います。だから弊社では垂直型で全て自社でできるようにしています。
「パッケージの色を戦略的に設計できるかどうか」で、中小企業の商品力はもう一段引き上げられる、ということでもあります。
◆ パッケージやブランド設計でお悩みなら
パッケージの色は、センスの問題ではなく、戦略と設計の問題です。
「なんとなく」で決めてしまうと、後から修正するコストの方が大きくなってしまいます。
・新商品を出したいが、どんな色・デザインにすべきか悩んでいる
・既存商品のパッケージを見直したいが、どこから手をつければいいか分からない
・ECとリアル店舗、両方を見据えたデザインにしたい
こうしたご相談があれば、数字(売上・利益)と現場のリアルを踏まえた視点から、伴走型で一緒に考えることができます。
パッケージ設計・ブランドづくりのご相談はPlow株式会社へ
Plow株式会社は、数字に強い認定支援機関として、
経営改善計画だけでなく、パッケージ・ブランド戦略も含めた
「売れる仕組みづくり」を中小企業と一緒に作っていきます。