中国EC台頭と円相場の変動で、日本のEC市場はどう変化するのか
1.中国ECが日本市場で急拡大する理由
Temu・SHEINといった中国系ECが日本の消費者に広がる背景には、以下のような構造的な要因があります。
- 中国市場の成熟により、企業が海外市場へ積極進出している
- スマホ・SNS・ライブコマースの普及で海外ECの心理的ハードルが低下
- 物価高により、消費者が「低価格」「コスパ」を強く求めるようになった
- 国際物流の効率化で、海外発送が日常レベルで利用可能に
特に「安い・早い・そこそこ品質」というバランスが、若者を中心に受け入れられています。
2.為替がECに与える影響(資本流入 → 円高 → 輸入増加)
中国ECの存在感が急速に増している理由は、単なる価格競争だけではありません。為替の影響が大きく関係しています。
資本流入 → 円高 → 輸入増加
- 海外から日本に投資資金が流れ込むと、外国人は円を購入する
- 円需要が増えて円高になる
- 円の価値が上がると、海外の商品価格が相対的に安くなる
- その結果、輸入が増加し、中国発ECなど輸入ECに追い風が吹く
逆に円安になると、輸入品の販売価格が上昇し、海外ECの優位性は低下します。
つまり、中国ECと国内ECの力関係は、「価格」+「為替」で決まると言えます。
3.日本のEC市場の現在地:24.8兆円規模の巨大市場に変化が起きている
日本のBtoC-EC市場は、約24.8兆円(2023年)と巨大な市場に成長しています。
そこに中国ECが一気に流入したことで、特に低価格帯の市場構造が大きく変化しています。
- 低価格帯:圧倒的価格競争力で中国ECが急伸
- 中〜高価格帯:品質・ブランド・サービス重視の国内ECが中心
この結果、日本のEC市場は「低価格ゾーン」と「高付加価値ゾーン」の二極化が進んでいます。
4.今後、日本EC市場はどう変わっていくのか
(1)低価格帯は中国ECが圧倒的に有利
中国ECは仕入れ規模・物流ネットワーク・アプリの操作性・SNSマーケティング力が桁違いのため、中小の国内事業者が正面から価格で戦っても勝ち目はありません。
(2)為替(円高/円安)が市場シェアを左右する
- 円高:輸入品が安くなり、海外ECのシェアが拡大する傾向
- 円安:輸入品が高くなるため、国内ブランドが優位に立ちやすい
今後のEC市場は、為替の変動がそのまま競争優位に影響するダイナミックな構造になっていくと考えられます。
(3)国内ECは「ブランド × 信頼 × ストーリー」で勝負する時代へ
安さで勝てない国内事業者は、次のような方向性で差別化する必要があります。
- 商品の物語性(産地・素材・生産背景)
- 安心・安全・品質管理
- 配送・アフターフォローなどサービス品質
- ギフト需要・専門性・地域性などの付加価値
いずれも、中国ECの大量生産・大量販売モデルでは再現しにくい領域です。
5.国内EC・メーカーが取るべき戦略
(1)価格競争を避ける
低価格帯は海外ECが独占的に強いため、国内事業者が参入すると高確率で消耗戦になります。
(2)中〜高価格帯で差別化する
品質・ストーリー・ブランド価値・安全性など、日本企業が元々得意とする部分に注力するのが合理的です。
(3)越境ECで「日本ブランド」を生かす
抹茶、工芸品など、「日本らしさ」「専門性」がある商品は海外で強い需要があります。
(4)SEOや情報発信で“指名買い”を増やす
検索で比較されるのではなく、「このブランドだから買う」という状態を作るため、ブログやSNSで継続的な発信が重要になります。
6.まとめ:安さではなく“価値”で選ばれるECへ
- 中国EC台頭は「価格」だけでなく「為替」が後押ししている
- 日本のEC市場は、低価格と高付加価値の二極化が進む
- 国内事業者が生き残る鍵は「品質・ブランド・ストーリー」
- 価格競争より、価値競争で勝負する時代へ
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