中小零細企業は売上増加より利益の確保。売上増加は決して正義ではない事例
「売上を伸ばせば会社は成長する」――そう信じて動いた結果、資金繰りが苦しくなる中小企業が少なくありません。
本稿では、売上増加が“悪化要因”となった実例と、利益重視型経営への転換ポイントを解説します。
1.事例概要:売上120%でも利益は▲、現金も減少
小売業D社(年商1.8億→2.2億)。販促強化で売上は20%増加したものの、粗利率低下と販促費の膨張で経常利益は赤字転落。
在庫も積み上がり、決算時の現預金は前期比▲900万円に減少しました。
数値のスナップショット
- 粗利率:33% → 27%(▲6pt)
- 販促費:売上比5% → 10%
- 在庫:2,000万円 → 3,400万円
- 営業CF:+300万円 → ▲450万円
2.原因:「売上偏重KPI」と“安売りの罠”
目標が「売上額」だけに偏り、単価・粗利・在庫回転の管理がされていませんでした。
値引きキャンペーンや送料無料施策で数量は伸びても、利益は減少。結果的に、資金は在庫と売掛金に吸い込まれていきました。
教訓: 追うべきは「売上」ではなく「限界利益×回転速度」。
3.補足:売上が増えてキャッシュが減る/売上が減ってキャッシュが増える構造
売上と現金は必ずしも連動しません。
経営実務の現場では、むしろ逆の動きが起きることが珍しくありません。
① 売上が増えてキャッシュが減るケース
- 売掛金・在庫の増加により資金が滞留
- 仕入・外注支払いが先行し、キャッシュアウトが先に発生
- 新規顧客開拓のための販促投資が増加
=黒字でも手元資金が減る「黒字倒産型」
② 売上が減ってキャッシュが増えるケース
- 在庫圧縮で現金化(キャッシュフロー改善)
- 低採算事業を整理し、仕入支出が減少
- 高粗利・早期回収商材への集中で資金回転が改善
=売上は減っても「利益率×現金」が増える健全型
重要なのは「売上を増やすこと」ではなく、キャッシュを増やす構造を持つことです。
4.処方箋:利益ファーストの設計図
施策セット
- 商品別貢献利益(粗利−変動販促)の可視化とA/B/Cランク整理
- 価格改定ルール(最低粗利率・値引き権限の制限)
- 在庫KPI:回転日数と滞留在庫の月次チェック
- 広告は「粗利貢献ROAS」で運用(売上ROASから脱却)
- 月次「利益会議」—単価・粗利率・回転・在庫金額を全員で共有
5.成果:売上横ばいでも利益率+現金が回復
6か月で低採算SKUを削減し、単価を見直し。売上は横ばいながら、粗利率は27%→31%に回復。
在庫は▲800万円圧縮、営業キャッシュフローは黒字化し、資金繰りが安定しました。
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