「決算書は黒字なのに銀行から融資を断られた」 「毎年利益を出しているのに、なぜ追加融資を受けられないのか」
このような疑問を持つ中小企業の経営者は少なくありません。
結論から言えば、黒字決算であることと、銀行が融資できると判断することは別の問題です。
銀行は利益の金額だけでなく、借入金の返済能力、財務内容、資金使途、将来の事業見通しなどを総合的に判断しています。
大阪で経営改善支援を行うPlow株式会社が、銀行での法人融資・信用格付に関する実務経験と経営支援の視点から、黒字企業でも融資を断られる理由と、その改善方法を解説します。
この記事の結論
黒字企業が融資を断られる主な理由は、利益が出ていても既存借入金を返済する余力が不足している、借入金残高が過大、財務内容に懸念がある、資金使途や返済計画の説明が不足しているなどです。
重要なのは、単に黒字を示すことではなく、新たに借りた資金をどのように活用し、どのように返済するのかを数字で説明することです。
銀行は黒字というだけで融資を判断していない
経営者にとって黒字決算は、会社が利益を生み出していることを示す大切な成果です。
一方、銀行にとって融資は、貸した資金が契約に沿って返済されることを前提とした取引です。
そのため、金融機関は現在の利益だけでなく、今後の資金繰りや返済余力、既存借入金の状況にも目を向けます。
例えば、同じ年間500万円の黒字企業であっても、借入金が1,000万円の企業と1億円の企業では、財務状況や返済負担が異なります。
もちろん借入金残高だけで融資可否が決まるわけではありません。事業の規模、資産、キャッシュフロー、資金の使い道なども含めた判断が必要です。
日本政策金融公庫も、融資に際して資金の使い道や事業計画、資産・負債などを確認し、さまざまな角度から審査することを案内しています。
黒字なのに銀行融資を断られる7つの理由
1.利益は出ているが、返済する現金が不足している
融資審査で重要な考え方の一つが、返済原資(借入金の返済に充てられる資金)です。
銀行借入金の元金返済は、原則として損益計算書の費用にはなりません。
つまり、決算書上は利益が出ていても、その利益を上回る元金返済が発生していれば、手元資金が減少する可能性があります。
具体例:黒字でも返済余力が不足する会社
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 税引後当期純利益 | 400万円 |
| 減価償却費 | 200万円 |
| 簡易的な返済原資 | 600万円 |
| 既存借入金の年間元金返済 | 900万円 |
| 返済原資と元金返済の差額 | ▲300万円 |
この会社は400万円の最終利益を計上しています。しかし、簡易的な返済原資600万円に対し、元金返済は年間900万円です。
この状態で追加融資を希望した場合、銀行は新たな借入金も含めて返済を続けられるかを確認する必要があります。
※数値は説明のための架空事例です。実際の返済可能性は売掛金・在庫・買掛金の増減、税金、設備投資、既存借入の条件なども考慮して判断します。
経営者が最初に確認したいのは、利益額だけでなく、毎年の元金返済額と資金繰りの関係です。
2.既存借入金が多く、返済負担が重い
黒字でも、すでに多額の借入金を抱えている企業は、新たな融資に慎重な判断がなされることがあります。
銀行の財務分析で用いられる指標の一つに「債務償還年数」があります。
これは、一定の前提に基づいて、借入金などを返済するために何年程度必要かを把握する考え方です。
例えば、年間の返済原資が十分に確保できない状態で借入金だけが増え続けると、将来の返済負担は重くなります。
ただし、債務償還年数に全国共通の一律の合否基準があるわけではありません。金融機関、事業内容、借入条件などによって判断は異なります。
借入額を増やす前に、既存借入の返済予定表を一覧にし、返済負担を確認することが重要です。
3.売掛金や在庫が増え、資金繰りが悪化している
売上が増加している会社でも、現金が増えているとは限りません。
例えば、売上高が大きく伸びても、売掛金の回収までに長い期間が必要であれば、その間の仕入や人件費の支払いに資金が必要になります。
在庫についても同様です。仕入れた商品が販売されずに残れば、現金が在庫に置き換わった状態になります。
このような運転資金の増加は、成長企業にも起こる現象です。
銀行に対しては、単に「売上が増えたので融資が必要」と説明するだけでなく、売掛金の回収条件、仕入支払条件、必要資金額を具体的に示すことが重要です。
4.一時的な利益で黒字になっている
銀行が確認するのは、最終利益だけではありません。
本業の利益が安定しているのか、一時的な利益で黒字になっているのかによって、将来の収益力に対する見方は変わります。
例えば、営業赤字が続いている会社が固定資産の売却益によって最終黒字になっている場合、その利益が来期も発生するとは限りません。
金融機関は、営業利益、経常利益、特別損益などの内容を確認し、継続的に利益を生み出せるかを検討します。
経営者としても、黒字の理由を説明できるようにしておく必要があります。
5.自己資本が少なく、財務体質に懸念がある
長年黒字を続けていても、過去の赤字によって繰越損失が残っていたり、自己資本が薄かったりする企業があります。
銀行は損益計算書だけでなく、貸借対照表も確認します。
自己資本の状況に加え、資産の実態にも注意が必要です。
- 回収が難しい売掛金が残っていないか
- 長期間販売できていない在庫はないか
- 実態の乏しい資産が計上されていないか
- 会社と役員との資金の貸し借りが整理されているか
帳簿上の黒字だけでなく、資産や負債の実態を把握することが大切です。
6.資金使途と返済計画が明確ではない
融資を申し込む際に「念のため資金を確保したい」「資金繰りに余裕を持たせたい」と説明することがあります。
こうした目的自体が不適切というわけではありません。しかし、希望金額の根拠や返済の見通しが不明確なままでは、金融機関も融資の必要性を判断しにくくなります。
特に設備資金であれば、設備投資の目的、投資額、導入後の売上や利益への影響などを整理しておきたいところです。
運転資金であれば、どの支払いに必要で、どの入金によって回収されるのかを説明します。
融資希望額に根拠があることは、経営者自身が資金の流れを理解していることを示す材料にもなります。
7.最新の業績や信用面について説明が不足している
決算書が黒字でも、その決算が数か月前や1年前の数字である場合、現在の経営状況と異なることがあります。
銀行は直近の試算表や資金繰り、最近の売上動向などを確認することがあります。
また、税金・社会保険料の滞納、既存借入の延滞などは、資金調達の判断に影響する可能性があります。
資料が整っていないことだけで必ず融資を断られるわけではありませんが、最新の状況を説明できなければ、返済可能性を十分に確認できない場合があります。
なお、審査結果には金融機関ごとの融資方針や与信管理上の判断も関係するため、ここまでの7項目だけで融資可否が決まるわけではありません。
銀行の融資審査で確認したい3つの数字
融資を申し込む前に、経営者自身も次の3つの数字を確認してみてください。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 年間の借入元金返済額 | 現在の収益・資金繰りで返済負担を賄えるか |
| 借入金残高と返済予定 | 借入負担の大きさや返済集中時期を把握するため |
| 現預金残高の推移 | 黒字でも手元資金が減少していないかを把握するため |
これらの数字は、それぞれ単独で見るものではありません。
例えば、現預金が十分にあっても、今後大きな設備投資や納税が予定されている場合は、先々の資金繰りまで確認する必要があります。
少なくとも今後12か月程度の資金繰りを整理しておくと、借入の必要額やタイミングを検討しやすくなります。
銀行融資を断られたときに見直したいこと
まず、融資が難しい理由を確認する
融資を断られた場合、最初に行いたいのは、その理由を可能な範囲で確認することです。
金融機関が審査の詳細をすべて説明できるとは限りませんが、資金使途、返済能力、借入負担、財務内容など、今後改善できる部分がないかを確認します。
原因を整理せず、別の金融機関へ同じ資料で申し込むだけでは、同様の課題が残る可能性があります。
返済能力を数字で再確認する
直近の決算書だけでなく、試算表、借入返済予定表、資金繰り表をそろえ、返済余力を確認します。
返済負担が重い場合には、収益改善、売掛金の回収促進、在庫の適正化、既存借入の条件の見直しなどを検討します。
ただし、借換えや返済条件の変更は必ず認められるものではなく、金融機関の審査と判断が必要です。
融資の必要性と今後の計画を説明する
新たな借入を検討する場合は、少なくとも次の内容を整理しておきたいところです。
- 融資が必要になった背景
- 必要な金額とその算定根拠
- 資金の具体的な使い道
- 借入後の資金繰りと返済見通し
- 計画どおりに進まない場合の対応策
売上予測を大きく見せることよりも、実現可能性のある数字と、その根拠を示すことが大切です。
融資を受けるために経営改善計画は必要なのか
すべての銀行融資で正式な経営改善計画の策定が必須というわけではありません。
しかし、収益力や返済能力に課題がある場合、今後の改善策を具体的な数字で整理した計画が、金融機関との対話に役立つことがあります。
計画には、売上・利益の見通しだけでなく、資金繰り、既存借入金の返済、改善策の実施時期などを盛り込みます。
重要なのは、計画書を作ること自体ではなく、経営者が内容を理解し、実行することです。
当社でも、経営改善計画の作成だけで終わるのではなく、計画を実行できる状態に整えることを重視しています。
よくある質問
Q.黒字であれば銀行融資は受けられますか?
A.黒字であることはプラスの判断材料ですが、それだけで融資が決まるわけではありません。既存借入金の返済状況、財務内容、資金使途、将来の返済可能性などを総合的に判断します。
Q.黒字なのに信用保証協会付き融資を断られることはありますか?
A.あります。信用保証協会の保証には審査があり、金融機関側でも融資の可否を判断します。黒字企業であっても保証や融資が必ず認められるわけではありません。
Q.融資を断られたら、別の銀行に申し込むべきですか?
A.他の金融機関への相談も選択肢の一つです。ただし、現在の財務内容や返済計画に課題がある場合は、まず原因を整理することが重要です。同じ資料を提出するだけでは状況が改善しない可能性があります。
Q.経営改善計画を作れば融資を受けられますか?
A.経営改善計画は融資を保証するものではありません。しかし、改善策と資金繰りの見通しを明確にすることで、金融機関に会社の状況を説明しやすくなります。
まとめ|黒字かどうかより、返済できる仕組みが重要
黒字なのに銀行融資を断られた場合、単に「利益が出ているのになぜ」と考えるだけでは、問題の解決にはつながりません。
銀行が確認しているのは、現在の利益とともに、将来の事業の継続性や返済可能性です。
決算書の黒字は大切な実績ですが、それだけで会社の資金繰りや財務内容のすべてを説明できるわけではありません。
融資を希望する経営者は、利益だけでなく、借入返済額、現預金、売掛金、在庫、今後の資金需要まで把握しておきたいところです。
そして、資金が必要になった理由と、その資金が会社の収益や経営改善にどうつながるのかを説明できる状態にすることが重要です。
大阪で銀行融資・資金繰りにお悩みの経営者様へ
黒字なのに融資が難しい。
返済負担が重くなってきた。
金融機関へ何を説明すればよいか分からない。
Plow株式会社では、銀行での法人融資実務経験と経営支援の知見を活かし、財務状況の整理、資金繰り分析、経営改善計画の策定などを支援しています。
現状を正しく把握し、実行可能な改善策を考えることから始めませんか。
経営改善・資金繰りについて相談する※本記事は一般的な金融実務および経営支援に関する情報を提供するものであり、個別の融資可否を保証するものではありません。金融機関ごとに審査基準や判断は異なります。